10時発のカンタス航空の国内線に乗って、順調に11時過ぎにはシドニー空港に到着した。すぐにホテルへ向かうとさすがにチェックインには早いので、空港ビルの売店でクロワッサンを買って昼食にした。その後タクシーでシェラトンに行ったのだが、シドニーの街はメルボルンよりもさらに都会で、高層ビルがところ狭しと林立していて空が狭い。
田舎育ちの僕には息が詰まりそうな感じである。メルボルンには合わせて5日しかいなかったのに、何だかメルボルンが恋しくなってしまった。
そんなことを言ってもとにかくここで後の2週間と少しを過ごすことになるので早く慣れなければと思い、ホテルでの休憩もそこそこに街へ出かけた。向かう先はもちろんオペラハウスである。
シェラトンからオペラハウスまでは2km弱なので、曇り空で暑くもないし歩くことにした。ゆっくり地図と景色を対比させながら歩くことがその街を知るのには一番手っ取り早いと前々から思っている。右手にハイド・パークや植物園を見ながらしばらく歩くと、眼前にオペラハウスの白いドーム型の屋根が見えた。白いと書いたが実際には結構古くなってきていて褐色がかったくすんだ白である。オペラハウスの左手にはハーバー・ブリッジも姿を見せ、ついに写真でしかみたことのない場所へやってきたんだなあと感慨に浸る。でも曇りということもあって、風景の色合いが全体的に鮮やかさを欠いていた。
オペラハウスへ来たのには目的がある。この週末にシドニー交響楽団をアシュケナージが指揮して、ショスタコービッチの10番を演奏する。それを日本でもし同じようなプログラムがあったとした時の半分ほどの料金で聴ける。それでもし空いてればチケットを手に入れようと思ったのである。
チケット購入窓口にしばらく並んで、いよいよ僕の順番である。窓口の女性に「この金曜日のアシュケナージの・・・」と言うと、英語で以下のようににこやかに言う。
「ああショスタコービッチのね。ありますよ。」
「大人1枚ですね。席はどこにします?こちらだと98ドル、ここのオーケストラの後ろの席なら68ドルですけど。」
「はい、じゃあここの68ドルの席にします。学生証とかはあります?」
まあ学生だと割引になるらしいから決まり文句なんだろう。
「学生証はないんですね。あなたは30歳以下ですか?」
決まり文句かもしれないけれど、それはないだろう。さすがに誰が見ても20代では通らないと思うけど。僕が笑顔で「残念ながら違います。」というと、その窓口嬢が言うことには、
「冗談よ。」
さすがにおおらかで陽気な国オーストラリア。伝統あるオペラハウスのチケットを購入する際も和やかである。その上尋ねもしないのに、「来られる時はカジュアルな格好でいいですよ。」と親切に教えてくれる。何だか、「日本人の旅行者が見栄を張ってコンサートに来るみたいだし、教えてあげたほうがいいかしら」とでも思われているような気がして、それはそれで複雑な気持ち。
ちょっとひねくれ過ぎかな。まだシドニーという大都会に気後れしているんだろう。
